***  サイト開設二周年記念特別企画  ***

自薦 ・ 迷路作品レビュー


迷路作品を自己解説!
『 作品への思い入れと作成の内幕 』
 

 
 本日(2003.8.15)は、サイト開設二周年を記念して、迷路作品レビューを行いたいと思います。これまで公開してきた作品のうち10作品をピックアップして自己解説をすると同時に、それぞれの迷路に関して私がどのような思いを抱いているのかを語ってみたいと思います。普段はオモテに現れない作成者側の内幕をお楽しみいただければ幸いです。 (リンク先はすべて、新しいウインドウで開きます。)
 

 普通迷路

『小細工なしの直球勝負!』

見た目が最も “迷路らしい” 迷路です。解き方を説明するまでもなく、老若男女、誰もが楽しめる基本迷路です。
作成する場合も、深く考える事もなくスタートからのびのびと線を広げてゆくだけです。自由度が高く、頭をひねる必要もありません。
とはいえ、私はいい加減に線をひいて作成しているわけではなく、『嘉来流・迷路講座 単純迷路の作成法とその注意点 』で述たことを考慮しています。分岐点の作り方、壁の交差の仕方を変えることで、外形や難易度が違ってくるからです。オーソドックスながら、作成者の個性の出る迷路でしょう。
迷路を解くにも作成するにも極めて初歩的なタイプですので、初心者はこれで腕を磨くと良いでしょう。

 必曲迷路

『交差点では必ず曲がって下さい。直進やユーターンは不可。』

一見すると、ただの道にしか見えません。何のルールもないとすると、あっという間にゴールできてしまいます。しかし実際は、「交差点では必ず曲がって下さい」という別記ルールにより道に方向性をもたせて進行を制限しています。18歳当時の私が編み出した「道に方向性をもたせた迷路」の代表格です。
この作品は、中央の四つ又交差点をいかに通過するかがポイントとなります。前へ前へと進もうとばかりしていると、この地点を希望する方向に曲がることができないようになっています。希望する方向に曲がれるようにするには、どこかで “進行の巡り” を合わせなければなりません。試行錯誤を繰り返す中で “進行の巡り” の意味を感じ取ったとき、あなたはきっと「方向性をもった道」の真髄を理解することでしょう。 ( “進行の巡り” の詳細については、今後、迷路講座で解説しようと思います。)

 指示曲迷路

『指示のある交差点ではその通りに進んでください。ユーターンは不可。』

アイデア、難易度ともに秀逸な傑作です。人が難しい迷路を欲しているときは、私はまずこの作品を解かせるようにしています。もちろん「解けるものなら解いてみろ」という気持ちでいるのです。この作品があっさりと解かれてしまっては私の立場がありません…。そんな作品です。
必曲迷路と同様に、この迷路を解く際は、「希望する方向に曲がるために、どのようにしてそういう状況をつくりだすか?」ということを考えると良いでしょう。さらに、ユーターン禁止のルールによって発生する、「さっきと同じ道にいても今どちらの方向に進んでいるのかによって状況が異なる」という 道の方向性 に注意すると良いでしょう。
理性的に迷路構造を詰めてゆくこのような迷路を作成するのは楽しいものです。腕の見せ所、ということです。

 ドア迷路

『取っ手のある側から部屋に入れます。』

小学生当時の私が得意げに描いていた迷路です。何度も袋小路にハマッているうちに、自分がどの部屋を通過したことがあるのかを案外忘れてしまいます。いかに解答者の盲点をつくかということが作成のポイントです。「普通迷路」と同様、部屋の仕切り方とドアの配置の仕方によって個性が出てきます。
この迷路は “ドア” というアイテムにより、「必然的に後戻りのできない道」となっています。ここだけの話ですが、このタイプの迷路は実は必勝法が存在します。もちろん私は口が裂けても言えませんが…。

 洞窟迷路

『A → B → C → A → B → C → A → ・・・』

アイデア、難易度ともに標準的で、迷路を気軽に楽しむためにはお薦めの作品です。ある一定の順序でポイントを通過させるこのタイプの迷路は、実は作成するのがかなり難しいのです。本迷路も例外ではなく、複数解を潰す作業に骨が折れました。あまりにややこしかったので、前半部分は、意図してかしないでか(笑)、「複数解の積極利用」 の良い実例としておきました。
ところで、「洞窟に見立てておきながら地上に通じる出口がない。スタート地点にはどうやって行き着いたんだ?」というツッコミはナシの方向でお願いします(笑)。

 直進迷路

『直進しかできません。壁にあたった時に進行方向を変えられます。』

氷の床の上をツルツル滑っていくような感覚でお楽しみください。スイスイ進むことのできるこの迷路は、試行サイクルが短いためか、袋小路にハマッてもあまりイライラないのが特徴です。
ところで、一般に迷路を解く際に、解く糸口が見つからないときにゴールから辿ろうとする人をよく見かけますが、本迷路はルールの性質上、ゴールから辿ろうとするとかえって難しいという特異な作品です。素直にスタートから始めましょう。

 順踏迷路

『S → 1 → 2 → 3 → G の順番に踏んでください。一度通ったは二度は通れません。』

この作品は、メールや掲示板で本当によく質問が来ます。どうやら私の用意した “ひっかけ” にハマッている人が多いようです。“ひっかけ” に引っ掛からないように、ルール説明の文で「道」の文字を赤くして注意を喚起しているつもりなのですが…。「道」といいながら迷路図が格子状になっているのは何故か?どうしても解けない人は、ここを考えると良いでしょう。
「順踏」というネーミングも実にいやらしいものです。順番に踏んでゆくべきは数字であって 「マス」 ではありませんのでご注意を。
一回の試行が数秒で終わるような小規模の迷路ですので、“ひっかけ” の実体が理不尽なものであったとしても許してちょ!

 10000迷路

『10000、10000、10000、・・・と辿って進んでください。』

10000ヒット達成記念として考案した迷路です。数字が五桁であるところがミソで、これにより必然的にユーターンができなくなるため、ルールに「ユーターン禁止」と付記せずに済んでいます。
この迷路は作成が楽で、解くには時間がかかります。作成者側にとっては夢のようなアイデア迷路です。心配な点は、桁を数え間違えてゴールした人が必ずいそうなことです(笑)。
蛇足ですが、この作品がプロフェッショナルにランクされているのは、単に私の気分の問題です。文章系のサイト持ちの人は経験があるかと思いますが、「深夜のハイテンション」というものはどこか日常とは違う、酔いしれた自分がいるものです。いえ、私はこの作品を深夜に作成したわけではないのですが、もしこの作品に関して不適当な点があるとしたら(下部の白い余白とか)、作成・ランク付けの過程において、「深夜のハイテンション」に似た力が私を動かしたということなのだと思います。(←何言ってんだコイツ)

 アニメgif迷路

『黒マスの上を移動します。画像が切り替わったときに白マスの上にいたらその場から動けません。』

gif画像の特性を利用した、webならではの迷路です。突然道が途切れる恐怖をお楽しみください。
ところでこの迷路をなんとなく解けてしまった人もいるかと思いますが、このアニメgif画像には実は “ひっかけ” が用意されています。画像は一見すると 「A → B → A → B → A → B → … 」 という二種類の画像の繰り返しに見えますが、実は……!

 大中小迷路

『大 → 中 → 小 → 大 → 中 → 小 → ・・・』

この作品は、一見何でもないような、退屈そうな迷路に見えるかもしれません。事実、迷路後半に差し掛かると、進む道を見つけるのにうんざりしてくることでしょう。
しかしこの作品は、私にとっては特別な存在になっています。詳細は別項に譲りますが、この迷路を作成している最中に、大中小それぞれの円の面積と配置の仕方の兼ね合いで、「必曲迷路」や「指示曲迷路」にあったような “進行の巡り” を生み出すための別法を見出すことができました。作成者である私にとっては新境地を拓いたような、非常に感慨深い思い出のある作品です。迷路作成者として、自分の成長を感じた一幕でした。
  

 後 記


迷路を描いてゆくなかでは、思いがけない発見があります。期待したアイデア(新規ルール)が実はたいしたことがなかったり、反対につまらないと思っていたアイデアが面白いことに気付いたり、迷路作成の技術についての思い違いに気付いたり、作成理論の再構築を余儀なくされることがあったりします。正の発見も負の発見も、自分の成長に役立ちます。特に 『嘉来流・迷路講座』 として文章化した際に、頭の中だけで考えていたことに思い違いや考察の隙があったことに気付かされ、理論の再構築をします。作成理論に関して日頃当然のように理解していると思っていたことでも、それを文章にしてみることで、認識の甘さを感じることになるのです。そのたびに自分の未熟さを知り、研鑚に励もうと誓います。

さて私は、「一つの迷路を書くのにどれくらい時間がかかるの?」と聞かれることがあります。ずばり答えますと、30分もあれば十分です。紙とペンを用いてサラサラと描いて一応の完成をみることができます。その後、それをコンピュータ上で清書します。清書の方が時間がかかるくらいです。こう述べると、迷路を簡単に作成できているように感じられるかもしれませんが、実はアイデア(新規ルール)を練る時間が膨大にかかっています。最近では数ヶ月かかることも珍しくありませんし、せっかく思いついたアイデアでも、過去のアイデアと重複していないかどうかを自己審査して、その結果ボツにすることも多々あります。現状は、いかにしてアイデアを思いつくかということが最大の課題となっています。自然のひらめきに任せるのは効率が良くないと考え、一時期、アイデアの創出法を理論的に組んだことがありましたが、やはり自分には向かないと感じて現在休止中です。アイデア創出は自然の成り行きに任せておき、生活のなかで突然やってくるひらめきを逃さないようにすることが最良の策かなと思います。一種の自己管理です。

現在、迷路を 「作成すること」 の他に私が考えているのは、迷路を世の中に 「啓蒙すること」 です。思えば不思議なものです。「野球」や「テレビ」という言葉と同様に、「迷路」という言葉は誰もが知っている知名度抜群の言葉でしょうが、迷路の情報は日常にあふれてはいません。悲しいかな、言葉の知名度とその存在量は比例しないのです。また、子供の頃に触れた子供向けの迷路が価値基準となって、迷路に関して何がしかの先入観や偏見をもっている人が多いのではないでしょうか?私はこれらの現状を打破したい。打破のための旗手となり、迷路が大衆娯楽としてのみならず、芸術の一形態と認識されるように啓蒙したいと願っています。

 

さて、いかがでしたでしょうか?普段はサイト来訪者に伝えられないような内幕を述べてきました。「このレビューこそ深夜のハイテンションで自分に酔いしれているのでは?」というツッコミはナシの方向でお願いします(笑)。難しい記述もあったかと思いますが、「何だかよく分からないけど、色々な事が考えられているんだなぁ」という感想でも抱いてもらえたら十分です。

私は今後も研鑚を積んでまいります。ひとつでも皆さんによい迷路を公開できるよう励みます。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
(2003.8.15)

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