嘉来流・迷路講座
袋小路の再利用 |
ようこそ、嘉来的世界へ。 どうぞごゆっくりと、迷路の世界をお楽しみください。 このコラムでは、道の「方向性」を袋小路の再利用に結びつけることについて述べてみます。 |
「袋小路の再利用」と聞いてもピンとこないかもしれません。意味は文字通りで、一つの袋小路を二度三度と利用することをいいます。再利用可能な条件として「道が方向性を持っていること」があります。(道の「方向性」についてまだご存じない方は、先に 「 道に方向性をもたせよう 」 を読むとよいでしょう。) まず、次の迷路を解いてみてください。 ![]() どうでしょう。非常に簡単だったかと思います。袋小路がたったの二つしかないこと、そしてこのような小さな迷路であるにも関わらず 「 浮島 」 が三つも存在するため、ゴールに辿り着くことがますます簡単になっています。この迷路には袋小路が二つ存在しますが、それらは単純な役目しか果たしていません。 では、上の迷路に少し手を加えて道に「方向性」を持たせた次の迷路を解いてみましょう。 ![]() いかがでしょうか。先の迷路よりはゴールに着くのに時間がかかったでしょう。先の迷路との違いは「一歩通行」という特殊な条件が入っただけのように見えますが、実はそれに付随するもう一つの変化があります。 その実体が、「袋小路の再利用」という効果です。 上の二つの迷路の違いは、迷路に何も条件がない場合(図 1)は袋小路にハマりそうになったら引き返すことが出来ましたが、一歩通行の条件がついた(道が方向性をもった)場合(図 2)は引き返すことができないということです。この事実を応用すると、正解道順以外の道はすべて、特定の少数の袋小路に導くことができます。このことを次の模式図で説明します。 図 3 をご覧ください。この模式図では、スタートからゴールの間に六つの分岐点と六つの袋小路があります。普通の迷路では(道が方向性をもっておらず、浮島構造が存在しない場合)このように、分岐点の数だけ袋小路が必要です。 ![]() 次に図 4 をご覧ください。一方通行のルールをもたせた(道に方向性をもたせた)この模式図では、六つの分岐点に対して袋小路が二つしかありません。しかし、六つの分岐点の行き先が、無理なく二つの袋小路に集約されてゆくことが分かるでしょう。一方通行というルールによって方向性をもった道が、道を誤っても後戻りをゆるさない(道に方向性のある迷路では一般にユーターン禁止であることに注意しましょう)ために、特定の袋小路に行き着かざるを得ないのです。これが、方向性をもった道が為せる「袋小路の再利用」です。ひとつの袋小路に対し、複数の道を流れ込ませるのです。 袋小路を再利用するということは、用意すべき袋小路の数が減ることであり、同時に迷路図のスペースの節約になります。余ったスペースで、解答者を惑わす “ひっかけ” を作ることが出来ますねっ。 「袋小路の再利用」の手法を用いた迷路に 「 マス迷路-1 」 や「 ドア迷路 」 があります。是非挑戦して、「袋小路の再利用」の効果を実感してみてください。 (最後に、賢明な読者はお気づきでしょうが、以上のことは「浮島があってもその周囲の道に『方向性』をもたせれば正解道順は増えない」というもう一つの事実を利用しています。) |
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